マッパーズサミット2026 登壇資料

にBloomingCamp(グラングリーン3F さくらインターネット様)で開催された、マッパーズサミット2026での登壇スライドを紹介しています。

はじめに

マッパーズサミット2026のバナー画像。日程と場所が書かれている
↑ OpenStreetMap.jp のイベントページにリンクしています

マッパーズサミットは、本年が初めての開催となる「OSMマッパーの集い」です。 私、北村由衣が発表タイトル「日常に溶け込むマッピング」として登壇し、30分間のお時間をいただき、発表と質疑応答をしました。

大阪への往路、北陸新幹線・サンダーバードを利用したというイントロは場のどよめきを誘い、よかったです。 今年のマッピングストリークを1月2日に切らしていた話はあまりウケなかったですね…;;

途中、動画再生を含むスライドでパワポが応答なしになる事象、再現性があるのでなんとかしたいところです。 温かく再開を待ってくださった皆様、また再開後画面共有切れを速やかに指摘いただいたオンラインの方、ありがとうございました。

発表スライド

  1. タイトル画面

    日常に溶け込むマッピング

    北村由衣

    OSM ID: gc27

    東京都清瀬市在住

    合同会社北村由衣代表

  2. 自己紹介スライドの1枚目 自己紹介スライドの2枚目

    自己紹介

    北村由衣です。OSM, OSM-DiscordサーバIDgc27です。

    東京都清瀬市在住。西武池袋線秋津駅・JR武蔵野線新秋津駅が最寄りで活動拠点となっています。 物理的な活動範囲は、秋津周辺をコアに、池袋から所沢がメインです。

    本業はシステム開発業の合同会社北村由衣で、代表社員の肩書です。 コーディングの手を動かす作業、システム設計、顧客折衝。 会社事務の経理・総務・税務などをこなしています。

    OSM関連のツールでは、ブラウザベースで iD, Level0, Overpass-turbo。スマホからはEveryDoorとMapillaryを使っています。

  3. 本日の地図

    ひとつひとつ、完結させる
    一回のデータ編集は更新が完了した姿を示す

    完結は完成ではない
    次の編集工程・別の人に渡すことを厭わない

    住所タグはaddr:full
    これを使えば間違えることは無い

  4. マッピング実例

    ここから私のマッピング生活を紹介していきます。

    3つの工程で成立させています。

    1. 建物と道路の位置を決める
    2. 現地を歩く(EveryDoor/Mapillary)
    3. iDでセルフレビュー

    → 机上での作業と、現地調査を融合させた、日常的なマッピング作業のイメージ共有が目的地です

  5. 建物と道路の位置決め

    • 現地調査をしてデータを入力する前提として…
      • 建物が描かれていること
    • データ利用者の目線から…
      • 通れる道路は繋がっていること
      • 通れない場所は阻止されること
  6. SOCOLA所沢の編集前後の地図の比較

    建物が描かれていないと、位置を正確に表現できなかったであろう事例。

    埼玉県所沢市SOCOLA所沢

  7. 清柳橋周辺の地図

    橋梁の架け替えで経路検索に影響を及ぼした事例

    清瀬市/所沢市の境目にある清柳橋

  8. 航空写真のトレースをするとき、便利なショートカットキー

    • 3:エリアの描画
    • Q:直角に補正する

  9. EveryDoorでの入力画面例と、同じ場所のiDエディタでの画面例

    EveryDoorの活用

    現地入力に便利

    日本の住所構造にはイマイチだが、タグの直接入力もできるのでaddr:fullでケア可能(番地対応UIを開発中

  10. Mapillaryの活用

    • 写真で補完する考え方
      • 記録時点の現地情報を第三者が検証できる
      • 現地でデータ化しきれなくても大丈夫
      • GPSトラッキングと併せて道路形状の把握も

    スマホアプリのMapillaryがお手軽

  11. スライド12枚目。iDエディタにMapillaryレイヤーを追加表示した編集画面のスクリーンショット

    事例:東京都清瀬市旭が丘

    保存樹林の中の歩道。一部に階段がある。

    手元のスマホだけでも、航空写真で確認できない「位置」がトラッキングできる。また、階段の範囲などが後からでも確認しやすい。

    現地で記録しきれない情報量を保持し、OSMの地物に記録画像をタグ付けできるのは現地主義として優位。


  12. 編集ツールの使い分けと公開データ反映

    私が使う編集ツールたちです。

    iD
    ビジュアル寄り。ブラウザで動き、ひととおりの作業がなんでもできる。
    OverpassTurbo
    データ抽出
    Level0
    テキストでのデータ編集。主にOverpassで抽出したデータを加工するときに用いる
    EveryDoor
    スマホでの現地マッピング
    TagInfo
    「類似タグ」でtypo発掘… Overpassで引っかける対象データの探索など

    Level0については、そのまま編集作業をすることもあれば、テキストの一括置換をするためにサクラエディタなどを介することもあります。


  13. iDの住所編集欄のスクリーンショットを含む発表スライドの1枚。住所の入力候補が洋数字と漢数字、あるいは地名の欠落など、ブレている

    編集ツールの使い分けと公開データ反映

    編集は、対象地物に対してバージョン履歴が刻まれることから、任意の時点に巻き戻されても整合性を保つことを重視しています。

    また、OSMの編集については、その結果が全世界の利用者に影響します。このことから、私はベストでなくてもベターな入力を提唱します。

    ベターな編集については、ベストなやり方で別のマッパーや後日の自身が手を加えてよりベターな状態に編集することができます。 単独ではなくマッパーコミュニティーであることの強みが出る場面だと思っています。

    また、誤った入力は誤ったデータの増殖を招きます。iDに限らず多くのエディタが住所の入力候補に「近隣POIのデータ例」を候補に出してきます。 すなわち、誤ったデータが「あたかもそう入力するもの」であるかのように振る舞うのです。 特に住所については、確実なタグ分解が困難な場合、addr:fullの利用を推奨します。

  14. 本日の地図

    冒頭示した「目次」の再掲です

  15. 本番は時間の都合でこの先は大幅に駆け足で通り抜けました。

  16. 本日の地図(レンダリングv2)

    ほぼ同じ目次で、コメントが変わったスライドです。

    ひとつひとつ、完結させる
    編集コメントで内容を表明する

    完結は完成ではない
    適したツールで編集する

    住所タグはaddr:*
    キーと値を整合させる

  17. 住所編集の実例

    住所|OSM-Wikiのタグ分解処理例のスクリーンショットを提示しています。

  18. 現地調査での入力

    EveryDoorを現地調査での入力には最優先で利用しています。地図メモや、タグの直接入力など、現地調査では大活躍です。

    住所体系について問題点があり、addr:neighbourhoodを含む日本の番地体系に対応していません。 UIとして、号・番地・街路・市の順であったりと、日本向けとは言い難いのが現状です。

    この点、現地での入力は、無理せずaddr:fullキーを使ったり、Mapillaryで住居表示を撮影するなどが対応手段としては考えられます。 また、手数は増えますが、addr:nまでの入力でキー補完がされるので、手打ちすることは現状有効です。

  19. 既存データの正規化

    私が直近1年で多く実施している作業の進め方を紹介します。

    OverpassTurboで対象データを抽出 → iDで個別 または Level0エディタに流し込んで編集

    • iDの適用:チェーン店情報などを含めて標準化したい時に利用
    • Level0の適用:テキストエディタでの一括修正なども視野に入る作業。あるいは、テキストでの編集が容易なもの
  20. iD適用の編集事例

    iD適用の対象データとなる目安は、名称(name)からチェーン店であるものの、brandにWikiDataが設定されていないものです。

    コンビニは必ず適用できます。また、operator=日本郵便の追加によって、郵便局と郵便ポストが対象にできます。

    Level0エディタで適用されそうなものを見かけたときは、iDに移動して標準化するようにします。
    OSMのURLに/edit?node=1234を付することで、対象地物の編集に直接移動できます。

  21. OverpassTurboでのデータ抽出をしている作業画面のスクリーンショット

    Level0適用の編集事例
    Step1 対象データの抽出

    画面表示範囲に追従するbboxをクエリに入れることで、表示範囲の変更で対象件数を調整します。 1000nodeを超えるとLevel0が受け付けなくなります。wayの場合は各頂点を含むので件数が多く出ます。

  22. OverpassTurboのエクスポートダイアログ

    Step2 Level0への展開

    エクスポートメニューからLevel0に対象データを引き継ぎます。

    なお、クエリのデータ形式がLevel0向けになっていない場合、この時点で補正案が提示されます。

  23. Level0エディタでの編集事例。前後の差分を提示している Level0エディタでneighbourhoodを確認している図

    Step3 キーと値の補正

    既存のデータから「本来の姿」を復元します。

    掲載事例では、housenumberに「丁目」以下「号」までが英語記入されていましたが、provinceに始まる体系に改めています。

    neighbourhoodの表記の確認には、付随の地図表示のズームレベルを調整して表示されている地名を参照しています。

    利用するタグを以下に示します。

    addr派生
      postcode province county city 
      quarter neighbourhood block_number housenumber
      housename floor room
    level
    

    addr:floorとlevelが同値になっているケースが散見されます。この場合は、floorが正しいことが経験上多いですが、fixmeで整合処理した旨と現地確認を求める旨を記録しています。

  24. iDでテキストレベルのタグ編集をしている画面

    Level0とiDの「すべてのタグ」ビューのテキストモード、そしてビジュアルの住所欄の対応を俯瞰するスライドです。対象POIは自社です。

  25. 動画でLevel0の編集作業を見るスライド

    OverpassTurboでデータを抽出し、Level0エディタでデータを加工する一連の流れを収録した動画です。 この時の対象はaddr:streetで、浅草周辺を編集しました。

    対象変更セットは#177788527です。

  26. 目次の再掲載。ただし、最後の要素が赤丸で囲まれている

    本日の地図(レンダリングv2)

    後半で重みを置いた「住所」要素だけ強調しています。改めて、addr:*タグ群の適正化を啓発していきたいです。

  27. 住所編集のおすすめ
    住所正規化の沼へようこそ、入口はこちらです

    OverpassTurboへのクエリ
    [out:xml][timeout:25];
    nwr["addr:housenumber"~"-"]({{bbox}});
    (._;>;); out meta;
    

    nwr = Node + Way + Relation。全ての要素を抜き出します。nodeあるいはwayに絞ることで検索タイムアウトになる可能性が減らせます。

    {{bbox}} により描画範囲内での検索にしています。 なお、Level0へのエクスポート時は、「エクスポート作業をした時点のbbox」が引き継がれるのでズームイン・ズームアウトや範囲移動は注意が必要です。

    addr:full
    だいたいそのまま階層構造に分解可能なデータが入っています。抽出したデータをiDで開くのも良いでしょう
    KSJ2:ADS
    関東以西にインポートされて登録されています。addr:*への置換作業仲間募集中。Level0での編集にも向いています。
    ※山梨県では、平成の大合併で誕生した市がインポート時点で全て「南アルプス市」になってしまっているので、注意が必要です
    addr:street
    日本では原則として使わないタグなので、その正規化にはややクセがあります。訪日マッパーによる英語記入も散見されます
    addr:housenumber ~ "-"
    iDの住所入力UI最後の枠のため、「分からないけど詰め込まれた」データが豊富です
    addr:city ~ "区"
    東京23区では正しいですが、それ以外の都市ではaddr:suburbへの再配置などを含む修正が発生します
    各種全角数字
    半角数字への直しで済めばお手軽ですが、「野塩五丁目」などの場合addr:neighbourhoodへの適正配置など、沼らしさがあります

    関東、特に清瀬周辺から西武池袋線沿いから上記のデータパターンはかなり消えていると思います。

質疑応答

質疑応答タイムであることを示すスライド

発表後、主に3つの「質問」をいただき、会話を展開しました。

addr:streetの扱い

日本国内でこのタグは使われない、というのが私の中での原則です。 横道に逸れる形で「米軍基地内がねぇ」という話をした為、用法の確認の質問を受けました。

米軍基地内は、Street,Avenueで構成されているようなので、street体系の住所が正しく、よってaddr:streetの使用が適切であると考えます。

noteの使い方

タグnoteの使い方についてご質問がありました。

私はあまりnoteは使っておらず、用途に応じて異なるタグ・機能を使っています。

fixme
明らかに不正確であり、有識者の知見を求めるもの
地図メモ
後から見返して情報を補うのに使う。EveryDoorでも、publish to OSM のオプションを有効にすることで有効活用可能
description
地図の利用者に向けたフリーテキスト欄。他のタグで収められない情報を載せる

また、参加者から「工事現場を見かけたとき開業予定日をnoteしておく」という活用方法の紹介がありました。

Mapillaryの撮影機材

私がピンポイントで銘板だけを撮影するなど、「スマホで撮影している」旨を回答しました。 Android版、iPhone版ともに公式サイトからアプリストアへ移動できます。

スマホのGPS情報とカメラが一体的に運用できるので、とてもお手軽に始められます。


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